多くの学校では、そろそろ文化祭のクラス企画を検討するシーズンではないでしょうか?情報教育とは関係ありませんが、
一教員の取り組みが少しでもヒントになればと、昨年作ったページを手直ししました。(神奈川県立川崎北高等学校教諭 柴田 功 2001年5月)

担任の企み
柿生高校、川崎北高校の2校で6年間、担任を務めましたが、そのうち5回、文化祭でクラス劇をやりました。
90年「白雪姫」、91年「オズの魔法使い」、97年「美女と野獣」、98年「不思議の国のアリス」、99年「アラジン」
しかし、2000年、2001年度と担任ではなく、文化祭でそのエネルギーを発揮する場がなく、力をもてあましています。そこで、
私なりにためてきたノウハウをここに、記録を残そうと思いました。こんな教員もいるんだなあなんて思っていただけたらと思います。
クラス企画、何をやる?
担任「まずはアンケートでみなさんの意見を聞きたいと思います。」
例:飲食店なら何がいいですか・ビデオ制作なら何がいいですか・劇ならなにがいいですか
(ここでちょっぴり担任の考えを披露した。)
担任「文化祭なんだから文化的なことをしよう。一生の思い出を残そうよ。
飲食店ばっかりの文化祭でいいの?高校でしかやれないことをやろうよ。」
クラス企画、どうやって決めるの?
担任「企画係を決めて放課後話し合おう。だれでも参加していいよ。意見のある者は残って!」
(多数決が正しいとは限らない。やる気のある生徒を中心にすべき。やる気を平均化することはない。結局、やる気のある生徒だけが残り、ここで担任の考えを伝えると案外すんなり、「劇」に決まる。)
ビデオ制作はどう?
担任「それもいいけど当日ヒマだよ。
撮影したものを上映するよりも、お客さんの前で上演するほうが感動するよ。」
劇をやるのはどんなメリットがあるの?
担任「クラス全員に仕事があるし、やりがいがある、達成感がある。
衣装、大道具、出演、音響、ナレーターなど色々な仕事分担がある。生徒一人ひとりの個性が活かせるよ。」
やっぱり飲食店をやりたい
担任「40人でかき氷やさんをやってクラス全員が満足できますか?
一教室をつかって水飴やさんはないでしょ。
店員をやりたいのならバイトでもできるよ。
そんなに販売したいなら、客席に売店を作るから、それで頑張って!」

(劇と売店を組み合わせて、劇への反発を収束させる。)
企画係からの原案「クラス劇」に反対の人いますか?
(当然、反対の生徒がたくさんいる。しかし、企画係の話し合いを尊重させたい。)
担任「企画係は遅くまで残って話し合ったのですから、
意見があるのなら放課後残るべきだったのでは?」
シナリオはどうする?
(ストーリーのわかりやすいもの。キャラクターのはっきりしたものがおすすめと伝える。
絵本になっている話などは共通理解がしやすい。でも、ここは生徒にお任せた。)
キャスティング(配役)はどうする?
担任「立候補がいないなら投票にしよう。」(このときイジメと思われることが発覚したら劇をやめる覚悟でいた。しかし生徒はやはり的確な人選をするもので。担任は大ウケ!)
ダブルキャスト(1役2人)のメリット
出演者が多くなる。ローテーションなので休憩できる。上演によって組合せが変わり、リピーターが増える。同じ役の生徒同士ライバル心が湧く。他の団体とのかけもちの生徒の都合がつく。
そんな役、絶対やらないよ!
担任「わかった、やらなくてもいい。ただ、ここで自分のことばかり言っては進まない。とりあえず仮決定ということで投票を進めさせてくれ。」(一方で、主役に選ばれ、急にやる気が出る生徒も)
じゃあ、衣装をつくろう!
担任「放課後、布を買いに行こう!行ける人は残って。」
(まずはカッコウから。これが秘訣!)
大道具も作ろう!
段ボールは万能素材。衣装もお面も段ボールで。
 
作った衣装、着てみて!
なんだかんだと着て喜ぶ役者たち。ここのあたりで心境の変化が。
ここまで準備したけど、その役、断る?
みんなの大きな期待をしょって気持ちが急転回。
こんなにセリフ覚えられないよ!
とはいいながら生徒の力はスゴイものがある。勉強とは違っ素晴らしい暗記力。
演技のうまい下手は関係ない。一生懸命さが大切。
才能発揮!
大道具の仕掛けの達人、音響の達人、衣装制作の達人などが次々と現れる!
ジャファーの蛇(口と首が動く)、空飛ぶ絨毯(舞台を飛び回る)
  
お客さんいっぱい入ってる!どうしよう!
超満員で熱気ムンムン。教室に毎回100人以上のお客さんが来てくれた。

いざ幕が上がると、リハーサルで見たことがないようなオーバーな演技!
人に見られることは人格を変える!

  
カーテンコールは感動もの
上演の最後には出演者一人ひとりを紹介。大きな拍手に照れながらあいさつ。
次回は!○○君と△△さんのの組合せだから見よっと!
ダブルキャストは毎回違う演技で楽しい。
気合いの入ったお客さんは暑い教室に何度も足を運んでくれる。
上演の合間に自主的リハーサル
こうなると、担任はお客さん。
楽屋は読み合わせで必死。
最終公演はオールキャストで全員が出演!
担任は、ビデオカメラをもつ手が感動で震え、ファインダーが曇る。
グランプリ受賞!
だれも文句なし!
担任のコメント(プログラムより)
「僕を信じろ!」
 アラジンがジャスミンを魔法の絨毯に乗せるシーンで
「僕を信じろ!」というセリフがあります。私はあのセリフが
大好きです。本当に自信がないとそんな言葉は言えないものです。
 「本当にクラスで劇なんてできるの?」という問いに、私は
「僕を信じろ!」と言い続けてきました。3年4組のみんなは
その言葉を信じ、私の操る魔法の絨毯に恐る恐る乗ってきてくれたのです。
 しかし、準備が思うように進まず、私自身、本当に劇ができるのか心配で
仕方ない時期が多く訪れました。そんなとき、今度は生徒の方から
「私たちを信じて!」と声をかけられ励まされました。
私はいつの間にか3年4組の生徒が操る魔法の絨毯に乗っていたようです。
 お互いを信じ、クラスみんなの協力でつくりあげた劇「アラジン」、
一生懸命頑張りますので是非、見に来て下さい。

1999年9月
3年4組 担任 柴田 功

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